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ろうあ者や手話通訳、時には時事ネタも突っ込む20代の次世代手話通訳者×全コーダが書くブログ。基本週一更新予定。

【行事参加レポートVol.4-3】第49回全国手話通訳問題研究集会 ~サマーフォラム in かながわ~<2日目/C講座Ⅱ−1>

 ●第49回全国手話通訳問題研究集会 ~サマーフォラム in かながわ~
=主催:一般財団法人全日本ろうあ連盟・一般社団法人全国手話通訳問題研究会=
2016年8月19日(金)~21日(日) 神奈川県横浜市 神奈川県民ホール横浜国立大学など

 

<今回の部分>
8月20日(土) C講座Ⅱの前半

 

講座2コマ目です。いわゆる「地元関係者生え抜き講演」で、地元の神奈川通研の会員さんによる講演でした。

テーマは「医療に関わるコミュニケーション〜病院の中と外から〜」で、医療関係に関わっている手話通訳者2人が講師となりました。

まず、最初の講師は、神奈川県手話通訳問題研究会の医療班所属している会員さんです。大きな内容は医療班として活動していることでしたが、全体的に講演を聞いたあとに感じたことはまさに「命の恩人」に手話通訳者はなり得るということでした。

神奈川県手話通訳問題研究会の医療班は、手話通訳者はもちろん、歯科衛生士や歯科医師聴覚障害がある薬剤師や医師、さらには看護師もいる中で活動しているようです。

例会にて医療に関する手話を学び、イベント会場で健康相談を行うという流れが確立しているようです。イベントというのはおおまかにいうと、ろうあ者大会が大きなところで、健康相談にやってくるのは20〜60人ぐらい、幅がありますが、昔は来ても20人しかこなかったようです。このブースがあることをわかってくれるようになってから人が増えたとか。

 

続いて健康相談をしてくれた方の事例について。まず男性60代のAさん、高血圧、糖尿病、心臓病を持っていますが、健康相談ではリピーターとして来ていただいてる方。月1回必ず定期的に循環器内科を受診し、内服治療中。通食事や薬の内服にも気をつけているから大丈夫だという話でした。数字も全く問題ないのに、医療班から「息切れしない?」と質問をしたところ、「そうなの」と訴えた。このことから始まり、足もむくんでいて歩きづらいとか。医療班から先生方にお伝えしたらどうか?とその方に提案したが、コミュニケーションに不安を抱えているのか、なかなか言い出せそうにないと。医療班の通訳者を呼んで一緒に連れて行ったらどうかという話をして声をかけ続けているという話でした。

次の事例は女性70代、高血圧と肩の痛みがあり、肩の痛みの治療のために整形外科に通院中というかたです。この方も通訳は呼びません。いつも一人で病院にいくそうです。もらっている薬はなんですか?と確認してみると、湿布や痛み止めとは疎遠の胃薬をもらっていることが判明。本人に聞いたが、なぜ胃薬なのかわからないという。そういう人もいます。ちなみにその方は高血圧を治療をしていないので、診察を受けてもらうように説得したそうです。

 

健康回復のきっかけになった事例もありますが、健康維持の観点で訪れる方も。もうすぐ90歳になる男性は、若いころろうあ運動に精力的に活動してきましたが、毎年いらっしゃるとか。大きな病気はなく、年に1回定期検診をうけ、そして健康相談にやってくるそうです。

これらの事例以外にも、夜寝る前まで食べたり、食事のバランスも考えていないという人も。元気そうにしていても血圧が190を超えている人、220もある人もいたり。不整脈の人、手話を使っただけで息切れする人、そういう相談を受けたりするそうですが、病院の受診を勧めます。必ず病院にいくっていうのは簡単、しかし手話通訳者を呼ぶこと、先生とちゃんとコミュニケーションをとるということも大事だと。自分の症状をはっきり伝えられず、そしてもらう薬の内容がわからない。理解できない。苦しんでいるのに時間がもったいない。

 

医療班の方は、医師や看護師など仕事をきちんとしている傍らで、健康相談の時は医療従事者として毅然と対応しているという。手話通訳の必要性が一般の人よりわかるからこそ、受診が必要な人には手話通訳が必要だということを訴え続けているそうです。

先ほどの足がむくんでいた人も、すぐに通訳者を連れて病院に連れて行ったら、先生とコミュニケーションが取れていなかったことがわかりました。食事療法も始まって、なによりもその症状を持ってる方が一番楽になったのです。

リピーターじゃなくても、何かおかしい、じゃあ病院行こうという話になってそのまま手術になった人もいるとか。

 

この医療班の話、私はすごく大事な取り組みであると考えています。ろうあ者が手話通訳者を呼ぶ場面、それは何が一番多いかと思えるかというところにつながってきます。

役所で色々申請や手続きをする際にも必要ですが、自分の健康を守るための場所に意思疎通できないということは本来あってはならないのです。病院側も大きな病院では設置が進んでいますし、その話もこの後しますが、設置の進んでいない病院や地方部の病院は大きいところであっても設置されている例はごくごく一部です。その中で、手話通訳を呼ぶのがめんどくさい、プライバシーの観点からという中で通訳を呼ばないのはもはや勿体無いとも言えるでしょう。

このような解決されていく事例、健康相談があったから病気が見つかったという人もいましたが、なによりも「助かった」という声こそ、医療班が必要な理由にも直結はしていきます。

私個人としてはこの話を伺う前、医療班は医療に特化した手話を学んでいく研究班か・・・。とだけは思っていましたが、ろうあ者と共に生きていくという言葉そのものを表したような研究班であると再認識しました。

講師チェンジですが、長いので一旦切ります。